数ヶ月前にブラック企業をやめた。みんなには三年間修行に言っていたと話しているけれど、年末にあった友人に口々に言われたことがあった。
「よく死ななかったね」
身の上話なのに長文になっちゃった。
結論としては「ブラック企業に勤めていると本人の力だけではそう簡単に辞められないよ」という話。
続きは以下。
実際のところ、今でもよくわからないブラック度合い
鉄板ネタだし、後悔してることだし、これしかしてなくてこれしか話すこともないので最近友達と話すときはブラック企業トークを延々としている。それで分かったのだけど、どうやら自分が思っているよりひどい職場だったらしい。特定されるとまずいので、フェイクを入れるけど、
・二ヶ月休みがなく、その間12時間の立ち仕事+二時間の管理業務。
・一日休みをもらったと思ったら買い出しなどの用事を押し付けられ半日つぶれる。
・一日休みの後、また二ヶ月休みがない。
・商業施設に入っていたテナントだったが、一人でまわしていたため、遅刻したり倒れたりしたら即終了。
・営業成績が伸びないと怒られ、他店舗指導もしていたので他店舗の人間のモチベーション管理なども怒られ、精神的にも削られる毎日。
などのエクストリームワークをしていた。もちろんもっと辛い業務をしている人もいるだろうが、「もっと辛い人もいるから」という思いが自分をブラック企業を抜け出せなくしていた。働いているときに、突然の動悸があったり働いてる最中に突然の発汗があったりなど、体の調子は崩れ始めていたが、それらが大事なこととはすぐには思わなかった。
アスペに*1は中身が分からない周囲の社畜トーク
上記を見てブラック企業でないと判断する人もいるけれど、自分の周りはそんなことないようだった。というか、本気で命を心配された。
しかしやっぱり、自分には分からなかった。もちろん勤めて三年間一度も健康診断がなければ、ボーナスも出たこともないし、何連勤しても週休二日で一日八時間しか働いていないというはんこを押させられていたので、ブラックな企業だとは思っていた。
でも、みんな近い感じだと思っていたのだ。だって、みんな、休みがないとか残業代がでないとか言ってるじゃん!!!!上司だって「どこいっても同じだ」って言ってたし!!!!色んな自己啓発書にも「働くことはお金や福利厚生で選ぶな」って書いてあるし!!!!
だから、今でもそういう働きをしている人はいっぱいいると思っているし、働いてる人の半分くらいはこんな働き方だと思っているよ。でもね。
出来ることが増えると辞められなくなる
さすがにいつかやめてやろうとは思っていた。自分の身を守るためというより、それは上司の言葉が薄っぺらいとか、もっと本を読む時間が欲しいとかの方が重要だったけど。このときは体が壊れるとかはネタでしか話してなかった。
なぜなかなか辞めなかったのかというと、自分しか出来なかったことが多かったからだ。その会社では自分しか出来ない事務作業や管理業務が増えていた。もし自分が抜けたらそれらの業務を下の人がこなさなければならない。同じような思いは同僚や部下にはさせたくなかった。それに、これだけ僕に無理がきているのだから、自分が抜けたら会社はつぶれると思っていたし、会社がなくなることで仕事がなくなる人の人生は背負えないと思っていた。
結局なんでやめられたのか
結局、辞めることが出来た理由は、タイミングと運としか言えない。いつかはやめただろうけど、すぐには動けないほど体を壊していたかもしれない。タイミングというのは大きく2つあって
- 会社の事業が立ち行かなくなって再編が行われたこと
- 友達に送ったメールの返信に感動したこと
というのが大きい。
上記1、ブラックすぎるものはそのうち潰れる
上記「1.会社の事業が立ち行かなくなって再編が行われたこと」についてだけど、自分のところがブラックになっていたのは、利益が少なくて、人員募集や教育などの費用がなかったことが大きい。つまり、そのうち資金がなくなって潰れてしまうような状態だった。
上記2、数年会っていない友人の返信がじわじわ効いてきたこと
どんなに距離の近い人にやめろといわれても全然しっくりこなかったのだけど、会っていない友人からのメールはなぜか心にしみてしまった。連勤の続いていたある日、雇った子が犯罪を犯してしまい警察に捕まりまた一人シフトにもどるという希有な体験をした。あんまりにも面白かったので、全然連絡も取ってなかった数人の友人に「こんなに連勤で頑張ってるのにこの展開俺ついてなさすぎワロタ」というメールを送りつけていた。
半分以上が「大変だねー」くらいの返事だった中、一通だけ*2、際立った返事があった。それは、長文で、だけど、返信が早かった。たまたまだと思う。それこそタイミングだったんだろう。それには、「そんなことよりあなたが死んじゃうから、早く辞めようまだ大丈夫だから」ということが、なんども書かれていた。もらった瞬間はそれほど思わなかったけれど、何かあるときにこのメールを思い出した。辞めていいんだと思ったし、辞めるべきだと思った。
「ブラックの先」に興味がなくなった。
会社の再編、友人のメールに後押しをされた。するとだんだん正気になってきた。いつのまにか前向きな気持ちにすらなっていた。早く会社を辞めて自分らしく生きたいと思い始めた。
そして時間が経つにつれ、「仮に会社の上部にいってこのままボーナスで一千万とかもらっても、納得できない」と思うようになった。後日ブログにまとめるけれど、僕はもともとやりたいことがあった。それこそお金がもらえても、それが達成できないのなら意味がないと思った。それに、連勤は僕にかすかな自信を与えた。これだけ働いてこれだけの成績を残せる*3のだから、他の会社で働くことになっても通用するかもしれない*4。
その数ヶ月後、考えうる限り最高の形で退職をした。
運が良かった。体を本格的に壊す前に*5、断固たる決意をもって退職の意思を伝えられた。会社の再編のお陰で、嫌みをそこまで言われることもなく、他のメンバーに心を痛めることもなく、考える限り最高の形で退職することができた。別の業務に誘われはしたけれど状況が状況だったので断るのも簡単だったし、会社としても自分を雇うのは扱いにくそうだった。余談だけど全部ではないがさすがに残業代を出してくれた。
辞めたいとは思っていてもまともな判断は出来ない。
結果から見れば辞めて本当に正解だったと思う。好きなことを目指す毎日は最高だ。休むことで嫌みも言われない。変な動悸もしない。体調とパフォーマンスがどんどん良くなっている。
辛かったから毎日のように辞めたいと言っていたけど、踏ん切りはなかなかつかなかった。ブラック度合いについても、僕の友人コミュニティではブラックと言われるけど、実際のところどうか分からない。
でも振り返れば、自分には合わなかったし、あのままいたら死んでいたと思うし、時間がすぎてしまったことに後悔したと思う。
それでもあのときは分からなかった。本人にはどれほど深刻なのか分からないのだ。
……だから誰か周りにブラック企業勤めの人がいたら、一年に一回くらい優しい言葉をかけてほしい。少なくとも僕はそれがきっかけのひとつだったから。
僕のような人が、一人でも減りますように。
ブラック企業辞めてから日常のことにすぐ感動するしすぐ泣いちゃう。
— 石川 純平 (@sshift_jumpei) January 1, 2015
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