いい本でした。イケダハヤトさんが、仏陀系と表現するのも分かる、そんな著者の諦観力を感じ取れる本です。
「諦める力」為末大
この本の最も大事なことは第一章につまっているので(他の章は第一章の補足みたいなもんだ)、もしも本屋さんで手に取ったら第一章p38までパラパラと流し読んでみるのもいいかもしれません。この本で繰り返し主張するのは、「諦めないに固執しすぎるな」「結果を出すために選択しよう」です。
読んでほしい人
- 悩みを吹っ切ってパフォーマンスを上げたい人
- あれこれしたすぎて逆に何からしたらいいか分からない人
- 後悔があとを絶たなくて辛い人
僕自身がコンプレックスを抱え続けて苦しんでしまうタイプです。そのコンプレックスをどうして抱え続けているかというと、間違いなく、選択する勇気がないからです。
この本の全ては、この引用に詰まっているように思います。
「勝つことを諦めたくない」
そう、僕は「AがやりたいからBを諦める」という選択をしたにすぎない。
p24,25
僕も、そうありたいと思います。
前に進みたい人は、ぜひどうぞ。
それを包括する大きな目標のために諦める
為末大さんはみなさんご存知、陸上競技(特に400Mハードル)で結果を残されてきた方です。
2001年世界陸上エドモントン大会・2005年世界陸上ヘルシンキ大会の男子400mハードルにおいて、世界陸上選手権の2大会で銅メダルを獲得。
ただ、そのためには結果のでない、あるいは結果が出ないように思われた短距離を諦めたという背景があります。なぜ諦めてしまったのか。それは、「結果の出ることを最大限努力したから」です。
そして、短距離100Mの選手から400Mハードルへの転向をした為末さんはこう語ります。
自分という存在のままこのフィールドで勝てるのか。もっと楽に勝てるフィールドが別にあるのか。僕はこう考えて、勝負する協議を思い切って変えた。そのとき僕が徹底的に考えたのは、今の自分の力で「やりたいこと」をやるのか、それとも「できること」をやるのか、どちらを取るかということだった。熟考した結果、最も諦めたくなかったのが「勝負すること」だった。
P154
そして、「手段を諦めてもいいけれど、目的を諦めてはいけない」と語ります。
ちなみにこの考えかたに似たことは、色々なところで言われていて、
「なにかやりたいことがあるの?野望みたいな」と、私は質問したのである。そうすると、彼女は「うーん、料理が好きなので、料理関係の仕事はしてみたいです。料理教室とか、食堂とか、あとその流れで本が出せたらいいな、とも思います」という答えだったのだ。私自身、本を出す編集者的なプロデューサーではない(プロデュース本は初めてである)。彼女との会話の中で、料理教室・飲食店・料理本という「夢」の中で、彼女自身が積み重ねたものの中で、一番実現可能であるものを、私は選択したに過ぎないのだ。
夢はかなわないという話。 - 簡素な生活。
結局、目標がでかければでかいほど、手段に固執する必要がなくなるんですよね。もし何かに行き詰まっているときは、「なんでそれをやりたいのか」「その方法以外で達成することは出来ないのか」などを考えた方が良さそうです。
ただ、だからといって、次から次へとすぐ諦めてやることを変えるのは違います。
勝負をする前から努力することまで放棄するのは、単なる「逃げ」である。
p38
諦められないときは経験が少ない
続けることはいいことばかりじゃない、諦めきれないことはいいことじゃないと著者は主張します。僕は思いました。「じゃあどこでやめるんだよ」
為末さんの見解によれば、結局それは「体感値」でしかないんだって。それでは救われない。これだけ諦めるなと書いておいて。なんて思ったりもしたのですが、ちゃんと書いてありました。
全力で試してみた経験が少ない人は、「自分が出来る範囲」について体感値がない。あり得ない目標を掲げて自信を失ったり、低すぎる目標ばかりを立てて成長できなかったりしがちである。
転ぶことや失敗を恐れて全力で挑むことを避けてきた人は、この自分の範囲に対してのセンスを欠きがちで、僕はそれこそが一番のリスクだと思っている
p59,60
結局、やりたいことをやりきらないといつまでもうじうじしてしまうよという話ですね。それから、こうも言ってます。
最高の戦略は、努力が娯楽化することである。そこには苦しみやつらさという感覚はなく、純粋な楽しさがある。苦しくなければ成長できないなんてことはない。人生は楽しんでいい、そして楽しみながら成長することが事態が成功への近道なのだ。
p37,38
僕の経験としては、楽しめないことは成長の速度が遅いし、やりたいことへの諦めが捨てきれなくなるんじゃないかと思います。 でも、それが分かったのは、やりたくないことを三年間やりきったからです。受験も就活もなにひとつ頑張りきらなかった自分が自分の限界とやりたいことについて考えたのは、そのせいです。
諦めたり選択したりするためには何かやりきる経験が大事なのは間違いないと思います。逆に言えば、やりきっていないうちは、下手に諦めずに全力をだしてみてもいいのでしょう。
一番を目指す範囲を決めて他人に流されない
一番になりたいと言ったとき、どの範囲で一番になりたいかは無意識に決めていると言います。日本で一番なのか、アジアで一番なのか、世界で一番なのか。もしも日本で一番を目指し、実際一番をとれたとして、「もっと上には上がいるんだ」と言われたらどうすればいいんでしょうね。
「いや、俺はそこまで求めていないんだ」
そう言えばいいのだ。それを「自己満足」「逃げ」ととらえる人もいるだろう。
しかし、どんな分野に置いても厳密な「一番」なんて誰にも分からない。オリンピックに出場することはなくても、金メダリストを上回る身体能力を備えた人間だって地球上にはいるはずだ。なにしろ地球上の半分以上の人はスポーツをやったことすらない。どんなランキングも、人為的なものである。それを念頭に置いた上で、自分はどこでどこまで勝ちたいのか、その上で何を成し遂げたいのかを考えておくべきだ。そうすれば、「上には上が」などと言われても、涼しい顔で「自分はこれで満足だ」と言えるはずである。
p150
「では、あなたは僕がやめずに続けたとして、どのくらいまでいくと思いますか」
その問いに対する答えが具体的で根拠のあるものなら、考え直すのもありだと思う。しかし、ただ「諦めるな」と言っているだけなら聞き流せばいい。
p155
悪気がそこになかったとしても、他人の思惑に流されることで、自分が掴めたものもつかめなくなってしまいます。だから、リスクをとって、選んで行かなければならないのでしょう。
僕も、やらなくていいことにずっとこだわってしまった結果、いつのまにか周りに置いてけぼりになってました。ブラック企業で休みなく働いてたらみんな結婚出産してた!
と、いう感じなんですが、
再度:読んでほしい人
- 悩みを吹っ切ってパフォーマンスを上げたい人
- あれこれしたすぎて逆に何からしたらいいか分からない人
- 後悔があとを絶たなくて辛い人
僕は、「企業の第一線でやりたくないことをする一般のサラリーマンをしながら副業でそれ以上に有名になったり成果を上げたりする」というやりたいことを諦めてトレードオフしました。それで今の生活があります。諦めなければ、前に進めないと思って、未来を選びとるために、諦めました。その結果はこれからだけれど、今のところは去年よりは楽しいし生産的な時間が多いです。
そして、不満足な今を越えるだけの強さを。
例えば、あの子の一番になりたかったけど、なれなかったらどうすればいいのか。もっと合う子を探してその一番になるのか、「まだ負けてない」と未来で一番になることを選ぶのか。
どちらにしても強さが必要になる。今を諦めて、未来を選んで行くだけの強さが。
僕は選びとる側でいたい。選ばなければ一番にはなれなさそうだから。
でかい結果を残すために、諦めて、選んで行く。
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トレードオフの概念に付いてよくまとまってる本です↓
・クズに方針を与え少しまともにさせてくれる本、エッセンシャル思考
目標はデカい方がいいという話です↓
・目標はやたらでかく生きまると、ネガティブな人も落ち込みにくくなるという話。
昔は全部する強さが欲しいと思ってたけど、今は大事なものだけは掴んだり守ったりできる、そういう強さが欲しい。そのために捨てたり選んだりが必要になるとしても。
— 石川 純平 (@sshift_jumpei) February 6, 2015
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